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裏側 第1話


ある男がこの寒い冬の季節に歩道橋の上を歩いている。
彼の名前は“神田忠久”。
彼は大手金融会社に勤めている27歳のごく普通の会社員である。
しかし、彼はこれから普通の人生ではありえない事件が数多く起こるのである。

(本当に何もないな。)
こう思いながらいつもこの歩道橋を通勤途中、いつも歩いている。
毎日同じサイクル。
朝起きて、昼に仕事をし、夜に家に帰って、夕食を食べて、寝て。
そんなサイクルを毎日繰り返す
今日もサイクルの一部を費やしている。
(一体俺は何がしたいんだろう)

電車の走る音が聞こえる。
どうやら駅に到着したらしい。

定期券を改札にいれて、構内に入る。

ちょうどそこに電車がすべりこんできた
これに乗らないと会社には間に合わない。
急いで飛び乗る。

電車内は混雑している。
やっと入れるか入れないかの状態である。
周りはすぐに通勤の会社員や学生に取り囲まれてしまった。
会社の最寄り駅に着くにはまだ15分ほどかかる。
その間ずっと電車の窓の外を眺めていた。
ビルも家も看板も、まったく昨日と同じである。

水を打ったように静まり返る車内。
そんな車内で突然女性の断末魔のような声が俺の背後で聞こえた。

「痴漢」

その声に反応してとっさに俺は声のしたほうに振り向いた。
周りの人間は俺のほうをいっせいに向いた。
女性は俺の方を向いて続ける。

「このひと痴漢です」

俺は振り返ったことで完璧に痴漢と間違えられたらしい。
俺はとっさに
「ちがう、俺はやってない。」と叫んだ。

しかし、周りの人間は俺の手をつかみ、
「なにしてるんですか」と俺をにらみつけた。

と、俺の中にある記憶が飛び込んできた。
(痴漢犯罪の無罪を立証するのは難しい。)
テレビでえた知識だった。

と、そのとき目的の駅のプラットホームに電車が滑り込んだ。

俺は逃げることを考えた。


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