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出られない部屋

白く続く大地・・・、

白く続く空・・・、

どちらも真っ白で、見渡しても大地と空との境界を見つけることが出来ない。

実は空はないのかもしれない・・・

あまりにも白すぎて、手を伸ばせば白い天井があり、触れるのではないかと思えてくる。

しかし、実際には何も触れず、

ただ、足の裏に感じる白い砂の感触のみである・・・



白く続く世界、

風もない、

音すらもないこの世界。

一人の男が歩いている。

その男、生まれたままの姿でひどく疲れたように、

しかし、しっかりと大地を踏みしめ、

この何もない世界を、何か目標があるかのようにまっすぐ歩いていた。

彼はずっと考えつづけていた。

「ここはどこなんだ?」

「俺はどこに向かっているんだ?」

そして、

「俺はいったい誰なんだろう・・・」


彼は歩きつづけていた。

いつから歩いているのかは分からない。

昨日から歩きつづけているのかもしれない。

何十年、何百年も前から歩き続けているのかもしれない。

「昨日?「」

「昨日とは何だろう?」

ここには時間の概念がない。

ただ、ずっと白い世界が続いているだけでまったく変化はない。

いつからこんな世界なんだろう。

これから変化がおきるのだろうか?

ただ唯一の変化は、彼が歩いた足跡が伸びてゆくということ。

彼は何もしゃべらない。

以前はこの世界に少しでも、変化を与えるために彼は叫んだ。

「誰か、助けてくれ!!」

「誰もいないのか!!」

「俺はここにいる!!」

しかし、その声は世界へ溶け込むように消えていった。

何かに跳ね返って声が戻ってくることもない。

ただ世界に消えていく。

あまりの寂しさに、彼は砂を跳ね上げ、暴れまわり、咆哮した。

そしていつしか、

その声は嗚咽へと変わっていった・・・


現在、彼はその時から2度と声を出さなかった・・・

声を出したときに、

返事が返ってこない恐ろしさを知ってしまった彼は、

声を出すことを恐れた。

声を出した後に続く沈黙を恐れた。

今はただひたすら歩いている。

前を向きながら、

しかし何も見ず・・・

足だけを動かしひたすら前へと進んでいく。

時々、ふと目が覚めたように周りを見回す。

何度も、何度も・・・

しかしいつ見ても、周りには何の変化もない。

そして時がたつごとに、徐々に意識が戻る間隔が長くなっていく・・・


何度目かの目覚めの時だろうか。

彼は自分が目指すほうに、黒い点が見えることに気づいた。

その黒い点は本当に小さな点だった。

いくら歩いても、その黒い点に変化がないように見えた。

しかし、いままで真っ白な何もない世界を歩きつづけた彼は、

その変化に喜び、残る力を奮い起こし、それを目標に歩きつづけた。

長い時間を歩き続けた彼は、あまりにも変化のないその点に、何度もあきらめかけた。


もう、立ち直れないと思えるぐらいあきらめ掛けたとき、

それは、突然現れた。

遠くにあったはずの黒い点が目の前にあった。

それは、空間にぽっかり黒い穴が開いていいるように見えた。

裏から見ても同じ黒い穴で厚みがない・・・

今までになかった、状況の変化だった。

彼は何も考えず、その物体に手を伸ばす。

すると手は中に入っていく。

しかし、裏からは手は出てきていない。

これは別の世界への入り口のようだ。

彼は思い切って、その穴から向こうの世界に飛び込んでみた。


周りは漆黒に覆われた世界。

彼が通ってきた穴は白く、それ以外は何も見えない黒い世界が続いていた。

彼は迷っていた。

穴から1度は離れるも、しばらくすると戻ってくる。

また、しばらく考えたあとに、最初とは別のほうに歩き出して・・・・また戻ってくる。

何度かくりかえし、くりかえし、

白い穴が見えるうちにすぐに戻ってしまう。

彼は怖かった。

また、何もない世界を旅するのが・・・

もしかしたら、少し歩けばどこかに着くのかもしれない。

でも、やっぱり白い世界と同じように、今度は黒い世界が続くのかもしれない・・・

彼はとうとう、穴の周りから離れなくなってしまった。

彼は考えた。

「もしかしたら、この穴を目印に誰かがここを通るかもしれない」と。

とうとう、彼は立つ気力をなくし、その場で座り込んでしまった。

誰かがここを通るまで・・・