caRNAge
サーモンピンクか胸クソの悪くなるような紫色かと思っていたのだが。
意外な事に、火星の空は青く澄み渡っていた。
地表に瓦礫のクズ山やら山の間に作られた地下の複合型都市ピーハイヴへ通じる各種設備…集光装置やら大がかりな換気装置やら何やら…がゴチャゴチャと無い。
まっさらな、赤い地表が余計に空を青く見せている。
大破壊後の汚染されまくった地球ではカメラを通してモニターでしか見れなかった空を、火星だと生の目で見れる。
防護服も何も無し、でだ。
どうにも、苛々する。
まるで素っ裸にされたような不安感。
とっとと暗くてクソ狭い、ACのコクピットの中に収まってしまいたい。あんなにも中に居ると窮屈でとっとと出てしまいたい衝動に駆られるというのに。
人間というのは、オカシなモノだ。
火星に来るにあたって、俺はIDも顔も変えた。
まぁIDなんざ、結局のところ何の役にも立たない事を地球で散々学習している。
自分の記憶さえも、役に立たない。
頼りになるのは自分の腕。生きることを望む意志。
記憶も名前もアテにはならない。
時にはまるでマシンのソフトをアン・インストールするが如く『操作』や『処置』されてもコクピットに閉じこもり、闇の中でモニターに浮かぶ自分の機体名を認識した瞬間に活性化する、脳でもココロでも無く、躯が覚えている経験。
荷物を受け取るととっとと宙港に隣接している移民局のに向かう。普通ならそのまま職業斡旋所に向かうのだろうが。
メニューに酒も有る、俺と似たような『匂い』のする連中の気配がするスタンド式のカフェに向かう。
カウンターに居る人間の店員が注文を訊ねる。
店員の手の肉付きとインプラント・チップを観察して、俺と同じ種類の手だということを確認する。
ACの、コントローラーを握る手。
トリガーを引いて、ACを、そして人間を、ゲームのように壊して殺せる者の手だ。
「注文は?」
「エスプレッソ。それと…」
キャッシュで料金を払う。エスプレッソ一杯分にしては多めのコインをカウンターへ置く。
「レイヴン登録システムへのアクセス条件」
カウンターの上からコインがあっという間に消えた。
エスプレッソと折り畳まれたレシートが載ったトレイが差し出される。
レシートを開くと殴り書きで「宙港←→シティ高速道路のサービス・ステーション 23:00 テスト受付」とメモられていた。
ガセかも知れない…が。
行ってみるだけだ。
どのみち、人間は食わなくては生きていけない。寝る場所も要る。
そして火星では地球側に言わせると『必要以上に大量のAC』が存在する。
ACが在るなら、火星開発競争という名の下に戦いや殺し合い、AC関連企業の開発競争が在る。
とどのつまり、パイロット…レイヴンの需要が在る。地球よりも遙かに、だ。
「…どうせイじくるなら何だって、食わなくてもイイ身体にしてくれなかったのかねぇ……」
エスプレッソを流し込む。
苦味は感じない。
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昼休みの約45分の時間以内で、アドリブでどこまで書けるか?というトレーニングで書いたシリーズ。
ゲーム『ARMORED CORE 2』で画面に出てくるACや都市といった物よりも、オープニングで出る火星の風景に感動。
テラフォーミング済んだ火星が舞台、と知り「火星の空ってA.C.クラーク御大の火星テラフォーミングをシミュレーションした本見てサーモン・ピンクか赤紫色っぽいのかな」と思っていたのです。マジで。ゲームのOPデモできれいな青だったのには驚いた。赤い平原との対比あまりの美しさに目眩を憶えます。