と。
寝起きの、まだ半分以上眠ったままの頭でパリスは思い出していた。
照明が落とされた見慣れたヴォイジャーの居室。
当然だが、雪が降り積もった庭など何処にも無い。
なぜ突然、昔の…雪が降り積もった庭をグチャグチャにした事を思い出したのだろう、と周囲を見渡す。
ベッドは居心地が良く…何せ、手を伸ばさずとも触れ合える位置に情事の相手が背中を向けて眠っていて、当然の事だが服は着ていない…このまま0-3のアルファシフト勤務が無ければずっと居たいくらいに居心地がいい。
…そういや、誰だっけ…。
男、なのは確かだ。
真っ直ぐで硬質なラインで構成された首から肩のライン。女の柔らかい脂肪を含んだ肉とは明らかに異なる筋肉の付き方。
象牙色の肌、黒い髪。そっと眠っている顔を伺うと暗闇の中でアジア系の顔立ち。
ああ、あの新人だ。
何度かシフトが一緒になる時やちょっとした悪戯でロックコードをブレイクして入ったけれど。
何時だってアカデミーで刷り込まれた通りにキレイにベッドメイキングされたベッドとシーツで眠っていた。
そのうえ、使った形跡なんて全く感じさせ無いくらいに清潔なシーツで整えられたベッドしか彼の、ハリー・キムの部屋では見た事が無かった。
それが今はどうだろう。
紙クズのように揉まれ、乱れて湿気を吸って重いシーツ。
肌に散らばる鬱血の痕。
死んでるんじゃないか、というくらいに凝っと眠っているのは相変わらずだが。
…。
ああ、そうか。
何で、雪の降り積もった庭の…昔の事を思い出したのか…。
キレイで整った静かなものを、乱して周囲の者たち困らせる事が…俺は昔から多かった。
雪の降り積もった庭。
人間関係。
アカデミー。
艦隊。
マキ。
そして今はハリー・キム。
僅かな罪悪感と後ろめたさを感じると判っている。
なのにどうして、止められないのだろう。
雪の降り積もったばかりの庭。
庭の雪を、踏みにじって乱す事を。