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91=7*13
91→1.7.13.91







「お返しします」


 玉座に静かに座した少女は言った。
 外見にそぐわない、落ち着いているを通り越していっそ冷たいとも受け取れる平坦な声、平静な態度。
 高空に浮かぶ空気の薄いシェバト。今のシェバトには血の匂いが、満ちていた。
 女王の間も例外ではなく。砲撃で崩れた瓦礫から舞い上がる粉塵が空気を淀ませている。淀んだ空気の中で息をひそめて成り行きを見守っている女、子供、老人、負傷者の視線が、先刻の女王が「返す」と言った先の、床に置かれている『モノ』に注がれていた。

 あるいは、女王が返す、と言った相手に。

 元は白かったであろう、布がかけられた床の上に在るモノ。
 自分が覚えているよりは小さい、と遠巻きの周囲から恐れと畏れの籠もった視線が注がれているまだ若い男は思った。
 自身の名前よりも『守護天使』という役職名で呼ばれる事の多い男はゆっくりと抜き身で手にしていた、血でぬめる刃を納め、布に手を掛けた。

 『守護天使』自身がまみれた。
 勢いを付けて外された布。
 布の下に隠されていた『モノ』から。
 空気が揺らぎ、血の匂いが一層、濃くなったように感じられた。

「ほぼ直撃でした・・・集められた部分はそれだけです」  

 周囲の人間が眼を背ける程の、元は人間だったと思われるモノ。
 それを眼にしても女王の口調は変わらなかった。
 顔色も。
 守護天使も動じていないようだった。その証拠に。

「首が在りませんが」
 醒めた口調で評した。
 守護天使自身と、彼が検分しているモノ。

 検分している『もとは人間だったモノ』が身につけている服と守護天使の服は色も形もよく似ていた。
 いずれも同じ、ゲブラーの制服。血に染まっている点。ただ、床の屍が身につけている服は元から赤い色だった。

「損壊が激しく、回収不能だったそうです」と、先刻の質問に対して女王が答えた。
 女王の答えを聞いてかどうかは定かではない。
 無言で、千切れていた左腕を床から拾い上げると守護天使はきびすを返した。

「ジェサイア・プランシュの身柄があなた方ソラリスの・・・今回の戦闘の目的ではなかったのですか?」
「・・・私たちが求めていたのは『生きている』ジェサイア・プランシュであって、死体ではありません。
 死んでしまったなら、持ち帰るのは左腕で十分です」

 そう言い残し、守護天使は去った。


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[Postscript]
19関連のメモ。前身と推定。

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