Click here to visit our sponsor

ON STANDBY
(Based on game' RAYFORCE '. Disclaimer)
注: ゲーム『RAYFORCE』ネタですが著作権侵害の意図は有りません。MKW氏に演出加工・転載使用証発行済み。







 …レイ…スマナイ……私ガ オ前ヲ…

 誰かが遠くでこう言っているのを聞いたような気がする…。

 レイ…それは私の名だったろうか?

 あの声は父の声だったような気もするが、それはないだろう。何故なら私の本当の遺伝子上の父は生殖細胞のみを外惑星連合宇宙軍のジーン・バンクに預け、外宇宙へ出て行ったのだから。

 違う、出て行ったのではない。

  父は地球を乗っ取り、人類を追放した惑星管理コンピューター『Con―Human』と戦う事を恐れて逃げたのだ。

 ならばあれは、あの声は養父ドクの声だったのか?消去法で思考を巡らせるとその確率はかなり高いのだが、やはりそれもおかしいような感じがする。

 ドクは彼が育てた数多くの子供達―人工子宮で交配され、育てられた第三世代と呼ばれる人間達。あまりの多さに名前は生年月日を元につけられていたくらいだ―の娘の一人に過ぎない私にどうして謝る必要などあるのだろう?それも半ば泣きながら。

 私は私のでき得る最良の方法を選択し、実行した、ただそれだけのはずなのに。

 惑星管理コンピューター『Con―Human』が人類の存在を完全に拒否するようになってから既に70年余りが経過している。

 その70年余りの間に様々な事があった。私自身が作られる以前のことのため、与えられ加工された情報になってしまうが。

 初めのうちそれは『極わずかな誤差』とみなされ、自己修復機能に任せっ放しにされたまま惑星管理を続けていた『Con―Human』。

 『Con―Human』はそれをいいことに惑星環境を自らに適合させた。

 大気酸素含有率0.0001%以下、平均気温マイナス10℃という環境に。

 その環境は『Con―Human』ら機械にとっては実に都合が良く、人類を含めた生物にとっては苛酷極まりないものだった。

 そうする事によって『Con―Human』は苦もなく大量虐殺をやってのけたわけだ。それこそ真綿で首を絞めるような緩やかさで、確実に。

 やがて人類はようやく自分達の立つ大地が以前のままなのは見かけだけで全ては『Con―Human』の物だ、という事を認識した。

 気づいた時には既に大地を支えているのは冷たく冴えた金属のフレームとシステムのネットワークであってマグマや地殻はなくなっていた。

 かくして人類は自ら地球を出て行くはめになった。ある者は外宇宙に新天地を求め、一部の者は近隣の惑星に移住し、それ以外の者達は外惑星宇宙連合軍とともに『Con―Human』と戦う道を選んだ。

 私も含めて。

 何故なら大地を喰い尽くした『Con―Human』が宇宙に出てくるのは確実だったからだ。

 だが、こんな時代になったのは結局何がいけなかった?

 人類が『Con―Human』という便利なシステムに頼りきり、思考すること―古い言葉で言うならば向上心、または上昇志向と呼んだもの―を放棄したから?

 あるいはドクが以前語ったように「新たな進化のため」仕方のなかった事?

 でもドク、それは人類の進化なのですか?

 それとも『Con―Human』という機械知性体の事を指していたのですか?

 そのことを尋ねたら貴方は苦しそうな顔をして答えてくれませんでしたね。

 今なら私にもわかります。

 あれは、あの時点では『Con―Human』を指していたのだと。

  『Con―Human』は機械―ドク、あなたの言う所の「人類が決して持ち得なかった能力を具現化した物」―である故に勝つことは果てしなく困難です。

 圧倒的に多い数量。戦闘機は無人機であるため、高Gの負荷を全くと言って良い程無視した機動能力を示しています。そして生物では無い故に無慈悲に投入してくる化学兵器と中間子砲などの放射性兵器。

 新兵器を投入し、撃退に成功しても次の戦闘では更に改良を加えたコピー兵器で反撃して来ます。

 それに体する外惑星連合宇宙軍の兵器は搭乗者の生命・肉体の保護のために最大能力を発揮できずにいます。大きくスペースを取る生命維持装置。

 私自身、以前の戦闘で手足と内蔵の一部を失った時に実感した事です。

 何故ならそれから数回後の戦闘で私の機体は戦闘不能に陥り、救助を戦闘終了後まで待たなくてはならなかった時。私が救助まで生命維持装置を持たせることができてのは体の一部を機械化していたために装置への負担が軽くて済んだからだと知りました。

 その時直感したのです。

 もしも戦闘機にパイロットの脳だけ搭載して済むようになれば…生命維持装置はもっとコンパクトにすることができるのでは?その分武装兵器や機動能力を強化できるのではないかと。

 そのことを上官に話すと丁度そのようにする研究が進められている、と言うではありませんか。

 しかもその研究―CYBERNETICS・LINK・SYSTEM―はドクの行っていた物でしたね。

 私は研究の被験者を志願した。

 手術室で私を見た時ドク、あなたは驚いた顔をしていましたね。あなたのあの顔が私が人間の目で最後に見た物でした。

 手術で私は肉の体を完全に捨て去り、代わりに反射速度といった人間の肉体的限界を超越した鈍色の冷たい体を手に入れた。

 その体は素晴らしかった。

 私が望むがままに機体は動き、五感…いえ、センサーは全方向に向けられ直接それを感じ、知る事ができた!搭載兵器は自身の牙となり、攻撃命令がそのまま攻撃に繋がる!今まで何とも思わなかった敵を認識してからスイッチのボタンを押すまでの一連の作業が何と緩慢だったことか!

 私は戦闘機そのものになっていた。

 戦闘機はRVA―818X―LAY、通称 X―LAYと呼ばれ、私は更に改良を加えられていった。

 真空中でも全く影響のない体。

 負荷20Gの加速にも耐え得る機体。

 ハードワイヤー化された神経。

 脳に直結したインターフェイス。

 ドク、私が人類の新しい進化の結果そのものです。

 機械と融合した人類。

 X―LAYはその先駆けです。やがて人類は近い将来に

『Con―Human』の脅威のない世界を取り戻すでしょう。

 X―LAYはその為にも戦いたい。

 なのにあの戦闘を最後に随分と時間が経っている。暗く、何の刺激も与えられない状態でもX―LAYは自機の時間を記録している。それが長い空白時間の経過を告げています。

 ドク、ドク、どこにおられますか?どうしてX―LAYは戦闘に参加できないのですか?

 ここは、この場所は冷たく、暗い…

 寒い…さむい…こコハ…トても…サムイ…

  RVA―818X―LAY(X―LAY)の事故に関する報告

事故内容・実験機RVA―818X―LAYが実験中にデータ回収艦を攻撃、破壊した後自爆。(file A―9a1)

事故原因・パイロットの精神の変調によるものと判明。システムに暴走の形跡は見られなかった。                                                                             (file A―9a2)

追加報告

 パイロットは「人間」「肉体」「機体」の認識が不可能な自我の崩壊に陥っていると判明。

                                                                           (file A―9b)

  通達事項

※ RVA―818X―LAYは倫理的に問題があるため、修復の後に完全封印する。

   同時にCYBERNETICS・LINK・SYSTEMの開発・研究は中止する。

                                                           以上。       

 暗いジャンク・ヤードに光が舞った。滅多に人が入らないそこにやって来た人間達がいるのだ。

 無秩序に置かれ、ワイヤーに繋がれた機械の群れがちいさな光の輪に照らされている。どれも共通して半ば壊れかけている。それを見た全員がごく自然に感じた。

 ここはまるで墓場だ、と。

 だがその墓場で一際きれいな機体の前に彼らは立ち止まった。一人が大事そうに抱えて来た端末を外部インターフェイスに接続しながら言った。

「もう自分が何者だったのかさえも認識できない状態です…それでも彼女を、X―LAYを投入するのですか?」

「…ドク、残念だが今回の作戦にはどうしてもX―LAYが要る。わかってくれ。それに外惑星連合宇宙軍にはまともな機体がもうほとんど残っていないのだ」

 ドク、と呼ばれた彼は諦めた様子で端末を起動させた。

「X―LAY、いや、零、聞こえるか?」

 返事はない。代わりに『声紋確認』の文字が端末に返ってくる。

「…完全に機械の反応だな」

 彼は自分でも気づかない内にそう呟いていた。

 ドクはシステムが生きている事を確かめると今回の作戦におけるX―LAYの任務のプログラムが入っているディスクをスリットに入れた。

 これが彼女の最後の戦闘になるはずだ。

「…すまない…零、仮にも育て親である私がお前を、お前の心をこんな空虚な物にしてしまった…」

 読み込みの終わったディスクが吐き出されて来る。 後はメカニックやハンドラーの仕事である。

 彼らは機体から離れた。

 けん引されていく機体を見ながら彼は尋ねた。

「ドク、零と言うのが彼女の名前なのですか?」

「そうだ…私が育てた子供達の中では数少ない生き残りのせいか、実の娘のようだったよ…」

「…そうか…」

 彼はその名の持つ意味を思い巡らせた。

 零。

 空虚な数量ゼロを示す言葉。

 あるいは静かに降る雨。

 事実、彼女はあの冷たい機械でできた惑星に降ることになるだろう。

 その名のとおりに。

M.C.0185 第二次敵本星攻略戦・OPERATION RAYFORCE

     (A―301号作戦)発動。