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シシテサクハナ、ミノアルユメ


 重い閂がかけられている頑丈な鋼鉄の扉を抜ける。
 もう何枚、扉をくぐったのか。
 何段、階段を下ったのかは憶えていない。
 目指すは、この下にあるただ一つの部屋。
 鉄格子だといとも簡単に脱出してしまう『能力者』たち。
 彼らを収容するために造られた、鉄格子の代わりに分厚い特殊ガラスの板が嵌め殺されている特殊な牢獄。
 中に入れられた者が出るときは二度と還って来ない旅に出る時だけだ。
 だから、どんな顔で、ガラスの向こうに居る彼に向き合ったらいいのか判らなかった。

 それなのに。

 ガラスの向こうに閉じこめられて居る彼は、ボクに気づくなり初めて会った時と変わらない、世界中に出回った手配書にも描かれてた顔で言った。

「よぉ、コビー。久しぶりだな」と。

媚びとか、作為の無い純粋な
底抜けの笑顔。

「…お久しぶりです…本当に
 少しお話をしても?」

「ああ」

ボクにも、彼にも。
遺された時間は多くなかった。
外から遠い牢獄なのに響く地響きと怒号、戦闘音。
『海賊王』と呼ばれるようになり、数日後には処刑されることが公表された牢獄の中に居る彼を何とか助け出そうとする者たち。
『海軍元帥』の勅令により、何としても彼を数日後に衆目の前で処刑するため侵入者を防ごうとする者たち。
「話を、」と言い牢の中の彼は了承したのにしばらくの間、両者とも無言だった。

静かで。
静かすぎて、外の気配や音がかえって良く解る。
牢の中に居る者の仲間が交わす剣戟の音が。
牢の外に居る者の部下が防戦のため回廊を爆破する気配が。


「本当に、『海賊王』になってしまったんですね、ルフィさん」

グランドラインの果てに在る島ラフテルに辿り着いた数少ない者の一人で。
伝説の『ワンピース』を手にした者。

「コビー、お前も海軍将校どころか元帥だろ。よかったな」

夢を。

「手に入れてしまいましたね、お互いに」

全く相反し、最後には『敵』同志として向かい合う夢が。

「貴方は満足ですか?」

「ああ。だけど、まだだ。
ワンピースを手に入れるだけならゴールド・ロジャーがやったことをただマネしただけだろ。
海賊王は海賊王でもまがい物だ。
オレは新しい、本物の海賊王になる」

「ボクは後悔してます。
 元帥になることで、ラフテルに在るモノの事を知らされてしまいました。
 ルフィさんたちにとっては何でもない事なのかも知れませんがボクには重すぎます」

『ワンピース』とは何なのか。
なぜ、この世界には海王類や悪魔の実が在るのか。
どうして帆船も航海術も火薬、銃が有るのにそれ以上の兵器や機関が開発されないのか。
この世界の「秘密」が。


「その上、 『ずっと友達だ』と…あの時言ってくれた貴方の死刑執行命令書にサインを入れないといけなかった。
 サインをしないと、ボクはボクの夢を裏切る事になる。
でもルフィさん、貴方には死んで欲しくない。
殺したくありません」




夢を。

「覚悟、していたはずだろ」

いずれ、いつか夢が現実に近づくにつれて此の時が来るという事を。


「ええ。だからボクはココに居ます」

「オレと戦うか? 世界政府直下海軍、コビー元帥」

「対『能力者専用』檻の中からボクを攻撃するつもりですか?海賊王、モンキー・D・ルフィ」


戦闘音が近づいてきている。砲撃。厚い鋼鉄の扉が破られ倒れる。重い振動が城塞を揺るがした。
パラパラと天井の塗料が清潔な廊下に落ちる。
海賊王を救けようとしている者も、それを阻もうとしている者もすぐ近くまで来ている。
ボクは廊下へ、階段へ、地上へつながる扉にこちら側からかけている鍵と閂をはずす。

「?」

「ボクの部下と貴方の仲間たちが戦っています。あと数分で何れかがここに来るでしょう。
 最初にそこの扉を開く者にまかせる、という賭けはいかがです?」

海賊王の仲間だったら、ボクは死ぬだろう。
ここに来るまでの間も戦闘で武器は使い果たしている。刀はこんな狭い場所ではかえって使えないから。
だが扉をくぐったのが海軍の者だったら。
その者を証人として、期日を前にやむなく海賊王の処刑をボクが執行する。

「それもいいかもなぁ」

牢の中で彼は呟いた。
僕たちは待ち続けた。
扉が開かれるのを。

それぞれのうち、どちらかの夢が終わるその時を。





COMMENT(蛇足)================================

自分的に、ルフィとシャンクスが再会した時以上にコビーと再会した時どうなるのか、何が起こるのか、どんな状況なのか気がかりです。
なお、この話を「書く気」スイッチをガッツリと入れてくれやがったのはシューティング・ゲーム『RAYFORCR』の任務 『the END of Deeplayer』で流れる曲のアレンジバージョン。
コレ聴いていると牢獄話を書きたくなるらしい。
牢獄、面談、二度と遭わない、嵐の前の静けさ。互いに声を殺し、囁きだけが睦言。そして告白のSEX。静かなエロ系スイッチが入る。CD『RAYFORCE RUBBING BEAAT(規番ZTTL-0011)』の曲名「QUARTS」。でも出来るのは大抵、変なヤツばかりだ。何故か。


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