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19=19
19→1.19










「・・・命を蔑ろにし、死者を辱める者に名乗る名前はありません」



 恐怖と疲労のためか青ざめ、やつれた顔。だが、それを上回る怒りが籠もった眼で。
 シェバトに破壊と殺戮をもたらした者を真っ直ぐ見据え、稚さと成熟の狭間の頃に見える少女は言い放った。

 女王の間にまで満ち充ちた血の匂い。
 広間に横たえられた『死体のようなモノ』から、証拠となる首が無かったためかわりに左腕を引き抜いた、まだ若い男。
 彼は『ソラリスの守護天使』と呼ばれていた。美しい響きの名前。
 だが。
 若い外見と名前とは裏腹に。
 『守護天使』は単身でシェバトに乗り込み、手向かう者、障害となる者、武器を手にしていた者は女子供であれ容赦も躊躇いも無く彼は手にしていた刃で斬り捨て、己の服を相手の血で染めていった。
 彼が暴いた『死体のようなモノ』。
 爆撃を受け、吹き飛ばされるまでは一人の人間だった。血で汚れ、所々破れているが『守護天使』の身につけている物と同じ、ソラリスの軍服であるのが見て取れる。


 ソラリスの『守護天使』はかつての仲間であれ、かように扱う事が出来るのか? 


 遠巻きに、恐れと怖れと畏れの混じった目でその様子を見ていた老人、子供、女たち。
 その中から一人の少女が進み出て、暴かれた死体に布を掛けた。

 死体から取った左手を手に、立ち去ろうしていた『守護天使』の
「あなたは?」という問いに対して、彼女ははっきりと言ったのだ。
「・・・命を蔑ろにし、死者を辱める者に名乗る名前はありません」と。


 広間の空気が、凍り付いた。 
 守護天使が、彼女に近づく。片手にそれなりの重さの有る『人間の左腕』を持っているとは思えない滑らかな動き。
 周囲から音に成らない悲鳴が上がる。
 彼女を見据え、むしろ穏やかとさえ感じられる声で彼は言った。
「わたしが怖くないのですか?」
「怖くない、と言えば嘘になります。守護天使、貴方はこれだけの距離が有って、刃を抜いていない今の状態でも私を容易く殺す事もできるのでしょうから」

 いつの間にか。
 実に、瞬きする間も無い間に。
 彼は彼女に手を延ばさずとも触れる事の出来る位置に居り、彼女の首筋に刃を押し当てていた。

「この状況でも、貴女は先刻と同じ事が言えますか?」
 優しげな、声と表情で、彼はそう問うた。
 先刻よりも青ざめたように見える彼女の顔。懼れ、戸惑い、恐怖の色が、目に浮かんでいる。首筋に当てられた冷たい刃。目の前の守護天使の服から匂う、彼自身のものではない血の薫り。
 彼女は、彼の手に有る、引きずられるように持たれた左腕を見た。
 左腕だけでなかったら、多分仲の良い者同士が握手をしている、そんな具合に見れたかもしれない。
 恐怖の混じった目。それでも彼女はまっすぐに自分の首筋に刃を突きつけている守護天使を見つめ、小さく頷いた。

「貴女は、勇気の有る人だ」
 彼は身を屈め、まるで恋人がそうするように彼女の耳元で囁いた。
「良くこのような状況だと、『殺したのは任務だから仕方の無いことだった』と言う者がいますが、私は私の手、私の意志で殺し・・・相手の命を、時間を、幸福を奪っています。だから、復讐をしたいなら私の所へ・・・ヒュウガ・リクドウの元へおいでなさい。勇気の有る人。
 またいずれ、お会いしましょう」

「あなたは・・・」

 彼女が何かを訊こう、とした次の刹那には守護天使も、彼の手にしていた刃と左腕もろとも消えていた。


「・・・ユイ、良く無事で・・・」
「女王、申し訳ありません」
「何故・・・どうして謝るのです?」
「女王の前での、私の勝手な振る舞いで女王のみならず広間の者を危険にさらしました」
「かえってあれくらいで良かったと私は思いますよ。あれで守護天使が・・・躯にゲートを埋め込み、操る程のエーテル能力者を巧く騙せたのならば・・・それよりもユイ、首から血が・・・」
 刃を押し当てられていた所を指でなぞる。
 薄い傷。自分のものと、押し当てられた刃から移った血が指に絡み付いていた。

 ユイはしばし、それを見つめ、何故か愛おしげにそれを舐めとった。


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[Postscript]
 0628関係のメモのひとつ。
 これの前身らしいのがもうひとつのメモ、91

 ユイとヒュウガ(シタン)の、出会いがどんなのだったのかはゲームで全く出てこないのですが。
 最初は敵同士だったのだろう、と推定。
 そしてジェサイアとジョシュア、「入れ替わり」の際にはシェバトが絡んでいそうなので(つーか、ジェサイアのような大物の亡命工作。強力な協力者たちが居ないとうまくいかないだろう…カナジャン並みに)
 追っかけるソラリス側もアホではない、という希望があるので

1・数年後の為に、死んだことにして見逃す。泳がせることにした
2・「動きやすく」するために、ひとまず裏切り者になってもらう

のどちらかだといいなぁ、という希望。


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