3=3
3→1.3
※ 06経由で此処に来る事を推奨 ※
『処分』され、殺されるのが怖くて嫌で恐ろしくて。
生きる為に。
沢山の者を殺し、傷つけた。
沢山の物を壊し、損ねた。
カレルレン閣下の手足として。
壊すこと、殺すこと、手を汚す事を行うために私は生きることを赦されている。
だから、私は決して幸せにはなれないだろう。
殺し、傷つけて。
私はいつの間にか『守護天使』という役で天帝の側に就いていた。
『器』と同調した者。
法院の、それぞれのメンバーに就く、要するに手足。
高いエーテル能力、戦闘技術。
操作が困難な独りで何処へでも跳ぶための『ゲート』を体内に移植され、広範な権限の行使を赦された者。
他人が、ガゼルが羨む地位と能力。
他の『守護天使』はどうなのか、知らないし判らない。知りたいとも思わないけれど。
当の私には何の感慨も無い。
羊歯の花を見つけなさい。
「詩をおぼえた幼子」のような、真夏の夜の数刻だけ咲く鮮やかな紅い羊歯の花を。
花と同じ色の布を用いて慎重に摘み取り、持ち帰る事が出来れば幸せと長寿が約束される。
「…何故、そのような事を私に話されるのですか、陛下」
「幸せなど決して得られない、と初めから諦めているようだから」
「そんな事は…でも、その話にはデタラメだらけです」
羊歯は、花を付けない。
種子ではなく胞子で増殖する植物だと私は知っている。
「そうだ。羊歯の花などというものは存在しない。
だが…羊歯の花のように有りそうで無いモノは沢山ある。無さそうで稀に有るモノと同じ位に」
幸せ、ということ。
幸せになるという事。
「初めから諦めていては羊歯の花があっても見つけることは適わない。見つけようとしないのだから。ましてや持ち帰るなど」
「陛下は羊歯の花を見つけた事が?」
「………。
一度だけ、ある。
無理に摘み取ったゆえに…我は呪われ、人前に素顔を晒せず、死ぬこともかなわない…生ける屍になった」
天空の国を統べる生き神は、不幸なのだろうか。
幸福を約束する、在りもしない物を求める。
この国だけでなく、惑星ひとつに住む者総てを自由にできるというのに。
「陛下が『死ね』と言うなら私はいつでも死にますが…絶対の命が『羊歯の花を持ち帰る事』だとは…。
陛下が最初に私に下された命令は無茶な事です」
「無理で理不尽なくらいの命令を与えておかないと、私の守護天使は無茶な事をしそうだからだ」
「そうですか?」
「そうだ」
「…ではいずれ、陛下の下へ羊歯の花を持ち帰る事にします」
羊歯の花なんて、存在しないのに。
話にあった、羊歯の花は恐らく何らかの暗喩。何かの『モノ』なのだろう。
眼にした瞬間に、焼き付いて離れず、普通の『モノ』ではないと解るもの。
『羊歯の花』のことが話題になったのは最初に陛下に謁見した時だけだった。
以来、憶えてはいてもあえて想い出さないようにしていた。
少なくとも一人、私が無茶な事をしないように…それが彼の利益に繋がる為だからとしても…願い、待っていてくれる。ただその一点だけで充分だった。
なのに。
鮮やかな、赤い色をしているという羊歯の花。
私は任務で赴いたシェバトで、羊歯の花を見つけてしまった。
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関連ナンバー
[Title] シダの花
[Post Script]
ゲーム中に出てきた『アーネンエルベ』って、シダの花みたいな物なのかなぁとか思った次第。
羊歯の花、のようなモノの事が知りたい方は『アース・ワークス』(ライアル・ワトソン著)でも参照にして下さい。
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