「…一編、技司に看て貰え、浅見」
未だ建造中の城塞型 仏鉄塊『鶚 〈ミサゴ〉』に収容された俺と烏帽子鳥を見て同格の軍司でミサゴを預かっている鬼羅は言い捨てた。
何を看てもらえというのだ、鬼羅は。
墜落して損壊した俺の高機動型の仏鉄塊 烏帽子鳥か?
それとも俺の躯か?
「全部だ」
素っ気ない回答。
「何よりもまず浅見、お前の心内〈ココロウチ〉の状態だ。
助け出されるまでの間、笑い続けていただろう」
「それがどうかしたのか。
己の膝裏が目の前に有る。躯のあちこちが折れて普通の人間なら出来ない姿勢になっておった。陽の下で見たらさぞかし滑稽でおかしげな格好であろう、と思ったら愉快でな」
「…箍の部分でかろうじて繋がっおったから良いものの、絡まり合った貴様の手足と鉄塊の内部を目にした回収班の者たちが…」
「俺の事を『化け物』とでも言っていたか」
「そうだ」
「言わせておけばよいではないか」
「鉄塊の数は充ちていても、乗り手が絶対的に少ない。
鉄塊に乗りたがる者、箍で躯の体節を締める者たちが減っては困る」
「不老不死と強大な力。
ただそれ欲しさに箍で体節を締め上げ、礎碑の力の結集である鉄塊を操る低質な兵<ツワモノ>が軍内に増える事の方が困る。
鉄塊を操ること。簡単には死なないこと。それがなんたることなのかという事を新兵たちが目にするには、良い機会では無かったか」
餓えない躯。「食べる」という事を必要としない躯。
眠りを必要としない躯。「夢を見る」という事の無い躯。
簡単には死なない、壊れない、病にかからない躯。
死なない躯で生きるという事。強大な力を振るうという事。
それが一体、どんな事なのか。
「醜いという事を、な」
はっきりと告げる。
目の前で鬼羅が凍り付いた。
何を言い返してくるか、はたまた言葉よりも先に鉄拳が飛んでくるかと待ってみた。
実際、今の俺には待つことだけはいくらでも出来る。
■ 音楽機械劇場 正面玄関