墜落した、『エバーグリーン』。
十六年、だ。
あの巨大な墓標が出来た時から。
灰となった報告書が出来上がるまで…バイドの正体が判明するまでの時間。
その間、人間たちは四度大規模なバイドの襲撃を受け撃退して小康状態を保っていた。
対バイド用戦闘機、R系マシンとフォース・システムが完成するまでにかかった時間。
R系マシン専用に作られ手を加えられたリローデッド・パイロットとそのクローンたちが生産される傍らから死んでいった。
無限に続くかと思われていた、バイドとの戦い。
バイドの正体が判明してから、立案されていたケリをつけるための作戦…『LAST DANCE』。
バイドの本拠を、叩くという作戦は実行にうつされるだろう。
そのためのマシンも完成している。
パイロットは予備も含めて、培養も戦闘経験のインストールも済んでいる。
だが、バイドの正体を…連中が一体何物なのか、知ってしまった者たちはこの作戦実行に踏み切るだろうか。
分の悪い賭け。
下手をすれば…『エバーグリーン』どころか、我々が今住んでいるこの世界。時空そのものが存在しなかった事になってしまうかもしれない作戦の実行。
何としても、止めようとする者たちも軍の中にも居るだろう。
何かを…たとえそれが自滅に向かう選択行動だとしても、何もしないで居ることよりはマシだし良い事だと考える…人間の性を保持している者。
何もせず、バイドとの際限ない戦闘の未来を撰ぶ者。
ひとつだけ、確実なのは選択を迷っている時間。その経過とともに、対バイド戦闘機として生産されたR系機体とフォースシステムが喪われていくという事。
死刑に替わる刑罰処置としてリロードを受けたパイロット。
刑罰の下で感情を削除され、記憶を書き換えられ、人権を剥奪され、生殖能力を削除されている者たち。優秀な者はクローンと経験移植が行われている。
が、本来ならば死に値する犯罪の刑罰を受けている者たちとクローンだ、と言うことでリロード受刑者パイロット…リローデッドたちの喪失が止まらない事実。
その一方で…『エバーグリーン』の事件を忘れ去り、バイドの存在など何処か遠くの出来事と感じている『圏内』の者たち。
彼等は…どうするのだろう。
世界の、時空の、次元の流れや存在が完全に変わるかもしれない時に。
そして私は…どうするか。
何かをしようとすれば…出来る地位。軍部でのポスト。
選択する時間は残り少ない。
選択をできる地位にいるだけ、贅沢だと解っている。
リローデッドたちのように、感情を殺して選択をしなくてはならない。
バイドに対して、バイドのように。
■ 音楽機械劇場 正面玄関